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膠(にかわ) No.1  作り方



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ホルベイン製ラビットスキン(兎膠)果粒状のもの

膠(にかわ)とは動物の皮や骨、或いは魚の浮き袋を煮込んで作られて、長い間人類に愛用されてきたのですが、
20世紀に入って石油化学化合物が生産されるようになってから、その代用品が急速に広まり、それは私たちの周囲からやがて遠ざかってゆきました。
現在では、手仕事に関わる職人や美術家などの一部の人たちに使われ続けていますが、それも最近は危うくなってきています。
実は、私たちの生活に欠かせない食品のゼリー、ヨーグルト、ハム、チーズなどにも更に純度を高めたゼラチンとして使われ続けているのです。

古典技法においては、特にこの膠は決して欠かすことのできない大切な素材です。

かつては5000年以上も前のメソポタミアのシュメール人が接着剤として既に使用していたと言われています。
5000年もの間使い続けられた、この素材はまさしく人類の叡智の結晶が凝縮されていると言っても過言ではないでしょう。
その作り方は古典の書には次のように記されています。
1.生石灰をタライに入れ、水を加えて、全部溶けるまで掻き混ぜる。
2.動物の皮をこの溶液に入れ、毛が自然に抜けるまで1週間放置しててから、皮を取り出して十分に洗い清めて乾かす。
3.その皮をぬるま湯に入れてよく水を含ませる。皮に付いている肉や汚れを取り除き、清水に入れ、銅の容器で煮る。
   (煮ている間は決して目を離してはならない。)
4.煮詰まってきたら、布の濾し器か布切れで濾す。
5.水を2,3度加えて皮がすっかり溶けるまで濾す。泡だったら火からおろし、銅の器の底に水をつけて泡立ちを止める。
6.煮詰まるまで、何回も火に戻し、そして冷ます。弓鋸に糸を張り、小さく切り、固くなるまで、2,3日間板の上に置く。
7.次にそれを糸に通し、空中に吊って完全に乾かして完成です。
(但し、膠を作るのは、必ず寒い時期にすること。暑いと悪臭がするし、仕事がうまくはかどらないからである。)
と書かれています。

日本でも牛や鹿の膠が作られていましたが、残念なことながら次第に作る会社がなくなってきているという噂を聞きます。
5000年もの長い間、使い続けられたこの素材を、私たちはいつまで使い続けることが出来るのか、それは誰にも分かりません。
                                           膠 No.2 へ続く
                                             筒井

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ドイツ製 Hide glue pearls ペレット状のもの。







by johanesvermeer02 | 2019-08-14 22:38
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