![]() 【ラファェル前派】 19世紀 イギリス ロイヤル・アカデミーはラファエルを規範として形骸化した形式美を求めていたが、美術批評家ジョン・ラスキンの「近代絵画論」での「細部への探究こそが、創造主たる神の叡智、計り知れない創造の神秘を讃えること」の言葉に、若い画学生が共感し、「ラファエル前派」と名乗った。ラファエル以前の素朴な初期ルネサンスやフランドル美術を模範とし、ありのままの自然を正確に写し出そうとした。その特徴は、強調された線描写、旧来の明暗法から解放された明るい画面、鮮やかな色彩、細密描写である。フランドル絵画の影響も大きく、高度な写実性や表現技巧に凝った多様な色彩描写が多い。 また、バーン・ジョーンズの父親が額縁職人であったこともあり、この集団は額縁に関しても極めて造旨が深く、作品毎に意匠を凝らした額を嵌めている。 そして、ラファエル前派による芸術全体を改革しようとする志は、ウィリアム・モリスを介して、手工芸の復興をはかる「アーツ・アンド・クラフツ」運動へと広がっていき、今日まで多くの影響を残している。 余談だが、この一派と同じ意図のもとに、ラファエル以前の画家たちに普く用いられたテンペラでの描写を理想とみなし、その習得を目指した「テンペラ復興運動」(Tempera Revival Movement)を起こした一派も現れた。しかし、ラファエル前派はこのテンペラを試みることはなかった。 ![]() 【油性バインダーの使用】 −印象派 19世紀 フランス- 新古典派が主流だったフランスのアカデミー※22では、神話や歴史画が画題の主流であった。こうした中で、印象派は、保守的な美術界から、激しい批判に晒されながらも、展覧会を連続して開き、やがて、従来の美術アカデミーの受容者とは異なる層の人々、つまり企業経営者、そしてアメリカ合衆国にも販路を開き、大衆に受け入れられるようになった。印象派の特徴としては、目に見える筆のストローク※23、戸外制作、空間と時間による光の変化の正確な描写、描く対象の日常性、人間の知覚や体験に基づいた主題などが挙げられる。また、それまで各工房で作られていた絵具が、産業革命により工場でチューブ入りの絵具として大量生産されるようになって、絵具は硬めに練り上げられた。絵具の扱いもそれまでとは一変し、腰の強い筆、テレピン油を多用して、戸外での制作を行うようになった。一方ヨーロッパ絵画が、それまで築いてきたグラッシ※24、スカンブル※25、輪郭の描写やキアロスクーロ※26などの伝統技法を放棄した。 黒田清輝などが渡欧して西洋画法を日本へ持ち帰ったことや、20世紀から日本人資産家が収集したことから、日本の西洋画はここから始まった。印象派の作品は我々日本人には最も馴染み深い西洋画である。 ![]() 樹脂(resin)※28とは元来、植物から得られるものだったが、よく似た性質を持つ物質も合成して作られるようになり、それらも樹脂と呼ばれる。天然から採取して作られる樹脂を天然樹脂、そして20世紀初めに化学が発達し、石油から人工的に加工した合成樹脂が作られた。塗料や接着剤など、多くの産業と我々の生活にも密接に関わりが深いがゆえに、様々な企業ではその開発に凌ぎを削っている。絵画の分野でもその質や有用性から今後も躍進を続けてゆくと思われる素材である。しかし、その堅牢性は経年変化を経てみなければ判断しにくいことと、全てのプラスチック製品があまりにも大量生産されたがゆえに、その使用済みのゴミが、陸中のみならず、海洋までにも流出して環境問題にも発展している。 ・アルキッド樹脂絵具 合成樹脂が生まれる前に偶然出来た樹脂で、原料に大豆油などの天然の植物油を使用することから、人工改良乾性油樹脂と言った方が良いかもしれない。乾燥が早く、塗膜も硬い。透明で固着力も優れており、バインダーとしては油絵具よりも優れる部分もある。アクリル絵具に比べて、濡れ色と乾き色の差は少ない。水性・油性バインダーにそれぞれ使うことができ、その塗膜の強さから自動車のボディ塗装や、印刷用インクなどあらゆる分野で使用されている。 ・ビニール樹脂絵具 1926年にポリ塩化ビニールが工業化された。この絵具は主に、接着剤の木工用ボンドなどで使われているポリ酢酸ビニールから作られたが、色数が少なく、混色しにくいなどの理由から、限られた市場で使われたが、一般には普及しなかった。現在は安価なポスターカラーや凹版用インク、屋内、外用ペイント等に使われている。 ・アクリル樹脂絵具 この樹脂は1934年に工業化されて以来、20世紀以降の美術において、最も広く使用されている合成樹脂絵具である。元々高価であったが、強化ガラスを作る技術が確立すると、急に需要が高まり、透明さ、丈夫さ、重量、曲面加工のしやすさなどから、航空機の風防窓にも用いられた。やがて技術革新により、安価となり一気に大衆化され、あらゆる身近な製品にも使われるようになった。絵具へもその転用である。 有機溶剤で希釈する場合は、主に工業用ラッカー塗料に用いられ、絵画の描画用に使用されるのは、ほとんど水溶性のエマルジョンである。加える水の量を変えれば、厚くも薄くも塗ることができ、水彩風にも油彩風にも描ける。乾燥が早く、乾燥後に耐水性となるのが大きな特色で、発色の良さ、褪色や変色のなさがその特徴であるが、歴史が浅い材料のため経年変化については未知数の部分が残されている。尚、絵画修復では溶剤型のアクリル絵具も使っている。絶縁塗料、金属塗料などにも使われている。 注釈 ※ 1 顔料(pigment) 小さな粒子で水や油に溶けない。主に、土や鉱物、合成の金属化合物から作られる「無機顔料」と、石油化学合成か ら作られる「有機顔料」とに分けられる。無機顔料は古代から使われており、隠蔽力と耐久性に優れてい るが、希少 なものは高価になってきた。有機顔料は最先端の石油化学合成技術によって作られ現在の大半を占める。 ※ 2 バインダー (binder) 展色剤、結合材もしくは塗膜形成材で顔料を均一に分散させて固着させるもの。 (1)蒸発固化型、水彩などで、乾いた 後に同じ溶剤をかけると溶解する。(2)蒸発重合型、重合反応によって固化定着するものでアクリル絵の具等で乾燥後は 耐水性になる。(3)酸化重合型、油絵具が代表で、大気中の酸素を取り込んで化学反応を起こして固化する。(4)複合重合 型、テンペラがこれに当たる。まず、水の蒸発で一見乾いたように見えて、次に塗膜中の油脂分 が、時間をかけて酸化重 合して強い膜を形成する2段階の乾燥工程をとる。アルキッド樹脂絵具は溶剤による2段階乾燥である。 ※3 ソルバント (solvent) (溶剤)薄め液 他の物質を溶解させ、均一な溶液を作ることができる液体である。絵画制作上では、固体を溶かして液 状にするとか、高い粘度の液体を低い粘度のものに、調整するものに使ったり、更には溶解を利用して、洗浄除去に用 いられる。具体的に言えば、樹脂を始めとする各種の固着剤の溶解、制作に用いる絵具の調粘 度調整、塗膜表面の光沢 改質、下層への接着性の調整、筆洗や画面洗浄などが主な用途である。
※4 フレスコ画 fresco 未乾燥の漆喰に、顔料を水で溶いて描く技法。フレスコという用語は「新鮮な」というイタリア語に 由来し、乾燥した 漆喰に描くセッコ画と対置される。描かれた顔料は半透明の薄いカルシウムの被膜で保護されて強固な 状態を保つ。そ の日に描く予定分だけ漆喰を塗り、小面積ごとに仕上げるジョットが行っていた技法をブオン・フレスコという。 ※5 堅牢性 どのくらいしっかりと出来ているか。どれくらい壊れにくく出来ているか。特に美術の分野では、制作した作品 が、通 常の保存状態で時間が経過しても、ひび割れや、剝落、黴などに侵されない状態を保つ性質の事。 ※6 ズマルティガラス smalty glass テッセラ以外の色の入ったモザイク・ガラスのこと。 ※7 テッセラ tesserae(石の小片) モザイク画は主に古代から中世にかけて,地中海地方を中心に発達した。その細片(テッセ tessera)は普通数mmか ら2~3cm角で,大理石や貴石,色ガラスなどがあり、テッセラとは主に金銀箔をはったガラスなどのことで,漆喰地 に埋め込まれる。モザイクの特長は,耐久性に富み,輝かしい色彩が半永久的に得られることで,建築内部の大規模な 装飾に最も効果的に使われた。 ※8 吹きガラス技法 ガラス工芸におけるガラス成形技法のひとつ。熔解炉などで高温溶融されたガラスを、吹き竿と呼ばれる金属管の端に 巻き取って、竿の反対側から息を吹き込んで成形する。紀元前1世紀半ばに東地中海沿岸のフェニキア人によって発明 された技法であり、製法は古代ローマの時代からほとんど変わっていない。 ※9 ローマングラス (roman glass英) ローマ帝政開始(B.C.27年)から帝国の東西分裂(395年)までの約5世紀間に 、ローマ帝国内で製造・流通したガラ ス製品の総称である。吹きガラス技法による大量生産の影響で、それまで高価だったガラス製品の価格は大幅に低下し た。そのため、日用品としてのガラス器が新たに発生したが、一方で従来どおり高級品も存在し続けた。現代ではガラ スは透明なものがほとんどであるが、ローマガラスより前では、むしろ不透明なガラスが中心であった。しかし1世紀 の末から、透明なものが好まれるようになり、光を通すことという、現代では当たり前のガラスの性質が、ガラスの特 長として定着した。 ※10 エッグ・テンペラ (Egg Tempera英)=テンペラ・マグラ(Tempera magra) テンペラという言葉は、ラテン語のtemperare(テンペラーレ)が語源で、 「混ぜ合わせる」という意味である。歴史 的には卵白や卵黄、ガム、膠などをバインダーとしたという記述が11世紀頃の文書として残されているが、作品として 現在見られるものは、主には鶏卵の黄味をバインダーとした「卵黄テンペラ」が中心である。板の上に石膏下地を施し 、卵黄のバインダーで顔料と混ぜられ 、絵具として塗られた。宗教的荘厳のため、金箔を背景に使った作品も多く「黄 金背景テンペラ」とも称されている。1 5世紀からテンペラ画として、その後、17世紀頃まで、油彩と併用しても使わ れ続けた。 ※11 ハッチング (hattching英) 短い筆致を繰り返すことによって、線を重ねてその多少により濃淡の階調をつけること をいう。デッサンやドローイングでも濃淡の階調を作りだし、その重なる部分は暗部へと向かってゆく。隙間のある独 特なリズム感のある重なりの繰り返しによって美しい階調を作り出すことができる。油絵の登場する以前のテンペラ絵 画をよく見ると、その明暗の調子はハッチングという雨降り描きで表現されている。その綿密なハッチングでの表現に はいかに労力を要したかが窺い知れる。混合技法の場合この不便さは油絵具で簡単に置き換えることが出来る。今日、 ハッチングを敢えて苦労して行うことは、これとは全く異なる意味でのみ、生かされるであろう。すなわち線そのもの の美しさや、線と隙間から生まれる織物のような色彩効果などで、これにより混色により色が濁らずに、明るい色調を 保ったまま視覚混色が出来る特徴が挙げられる。網膜上でこの明るい色調どうしが混色するので、テンペラ絵具が明る く鮮やかなのはこのためである。 ※12 テンペラ・ミスタ(Tempera Mista)mistaはイタリア語のmisto(混合の、混成の)の意味である。初期の油絵具は 、透明性に富んでいたもののボディー感が希薄であったことは当時の作品からうかがえる。イタリアではテンペラが部 分的に彩色として使用されたのに対しフランドルでは、テンペラ絵具と油絵具の互層として絵が構成された。このバイ ンダーは全卵に樹脂と油を加えて作る。テンペラによる下絵に油絵具のグラッシがのり、またテンペラ絵具による描起 こしを行い、さらに油絵具のグラッシを重ねると言う工程を数度重ねて、テンペラと油絵具特長を生かした幅の広い表 現を可能にした。この油絵具との併用技法は、フランドル技法から改良されつつ今日まで行われている。 ※13フラックスシード(Flaxseed英) いわゆる亜麻のニ(仁=種子)の意味でその英語名。その学名はLinun usitatissimumでLinunはケルト語で「糸」を意 味し、英語でリネンとなり、キャンバスの素材である。人類が初めて栽培した植物の一つと言われている。紀元前7千 年代にはトルコやシリアで、また、紀元前5千年代には、エジプト人も栽培し、ミイラを包む布地に利用していた。食 用としての認知は、8世紀頃で、仏のシャルルマーニ大帝は、「臣民はアマニをとるべし」と、その健康上の価値を認め 法令化している。 この頃には、種子から搾った油を食に供し、茎は布地(リンネル )や紙に利用するようになった。 近年は健康食としても注目を集めている。 ※14グレーズGlaze英(薄く溶いた透明な絵具を幾層にも塗り重ねること) ある絵具層の上に、その調子を変化させるために透明な絵具を施すこと。15世紀前半の初期フランドル派の画家たちが 確立した。油彩の特徴的な技法であり、一般には樹脂分を含んだバインダーを用いて行われる。その目的は大きく2つ ある。その1つは異なる2つの色層を重ねることにより、新たな色調を生み出すためであり、もう1つは色調をあまり 変えないで色の深みを変化させるためである。いずれにしても、このglazeによる層を重ねて出る色調は美しい。 ※15テンペラ・グラッサ(Tempera Grassa) grassaはイタリア語のgrasso(油分を含む)という意味で、15世紀のルネッサンス期になると、ルネッサンスのより自 然主義的な写実表現にマッチした絵具に改良されて、卵のバインダーに油性分を加え、絵具の伸びを改善する処方が開 発された。油性分の混合により油絵具との併用が可能となるが、卵黄テンペラに比べやや明度に欠ける。 ※16 ワニス(varnish英) 古くは紀元前3世紀のエジプトで、戦争の勝利を祈願するために、美しい金髪の女性ベレニス(berenice)の髪をヴィ ーナスの神に捧げた故事に因んで、その後琥珀やコパールなど黄金色の美しい化石樹脂を「ベレケス」と形容するよう にりラテン語でvereniceからvarnishになった。木製品や金属製品、及び油彩画などの表面に塗布して樹脂の皮膜を形 成し、光沢を与えたり、保護したりするための塗料。加筆修正用や保護の為の仕上げ用がある。 ※17支持体(support英) 絵画の地塗層や絵具層を上に載せ、下から支えている物理構造をいう。板(パネル)、キャンバス、壁体、 文字通り「 絵を支えるものである。」一般には油絵はキャンバス、水彩は紙という取り合わせが最も普通で、これ以外にも多くの 支持体が用いられる。最も要求されることは耐久性に優れていることである。その他絵を描く一切の平らな面を含む。 絵画用の支持体は金属とガラスを除けば全て多孔質の物質である。画布の場合は織り目の部分に、紙や木材の場合は繊 維間の小さな間隔の部分に、その場所に引っかかりを作り、剥がれにくい層を形成する。多孔質物体に絵具が侵入する このような現象は、毛細管現象によって起こるものであり、支持体の上に最初に作られた下地層と、その上に順次塗り 重ねられてゆく絵具層同士の間に起こる毛細管現象によって、相互間に接着力をもち、固着される。 ※18インパスト(impasto 伊) 絵具を厚塗りしたり盛り上げたりすること。17世紀頃から使用され始め、特に対象のハイライト部分を厚塗りするこ とが当時の巨匠の作品に多く見られる。 ※19グリザイユ(grisaille仏) モノクロームで描かれた絵画で、デッサン類は含まない。フランドル派画家の多翼祭壇画の扉の表側に描かれる、トロ ンプルイユ(だまし絵)などの、それ自体が作品となる場合や、油彩の下描きに、モノクロームで明暗配置や大まか にモデリングして、描かれた上に、彩色させて完成とする場合がある。 ※20インプリマトゥーラ(imprimatura伊) 最初に施された絵具層を保護し、その絵本来の効果を整えるために、その上の層に施される半透明な単色の絵具層のこ とを言う。地透層とも言い、下層の線が見える程度に薄く色のついた地は、16世紀頃から使われ始めるが、主として 赤、褐色あるいは黒褐色が好んで用いられた。上に来る絵具層のバインダーの吸収を調整する絶縁層にしたり、画面 全体の色調を整えるのがその目的である。 ※21スフマート(sfumato伊) 煙を意味するfumo(伊)から派生した語で、明確な輪郭線で表すのではなく、まるで煙か霧がかかったように色や対 象の輪郭をぼかしたように描く技法をいう。レオナルド・ダ・ヴィンチが確立したと言われる。 ※22アカデミー(academy英) その名は古代ギリシアにおいて、プラトーンがアテーナイの郊外に開いた学園「アカデーミア(Academia 希)に由来 する。ルネッサンス期に人文学者や芸術家たちの集まりにこの名が用いられたが、「美術をも自由学芸に昇格せしめ美 術家を職人の境遇より開放しよう」という気運に支えられ、16世紀にローマで最初の「アカデミア」が作られ、次第 に従来のギルドに替わる性格を帯び、フィレンツェ、ボローニャ、ローマ、などに多くのアカデミーが創設された。フ ランスではルイ14世の時代に王立絵画彫刻アカデミーが創られ、美術に関する行政権と教育権を独占し、美術学校と 公式の展覧会を支配するようになった。18世紀にはロンドンでもロイヤルアカデミーが設立されたが、19世紀中期以 降、その伝統墨守の保守的傾向が「アカデミズム」として否定されるようになり、美術の主要な流れからは遠い存在と なってしまった。 ※23ストローク(stroke英) 絵画表現における描画法を表わす言葉。筆や木炭を使うとき、その画材の先を少しずつ画面に触れるように動かす行為 (あるいは筆の跡)を「タッチ」と呼び、日本語では「筆触」と訳す。また画面に対して、大きく腕を振るって筆を動 かすような運動感のある行為を「ストローク」と呼ぶ。画家本人よりもむしろ、評論家などの第三者が、出来上がった 絵画の画面にある筆の跡を見て、「タッチ」か「ストローク」かを言い分けているといった側面のほうが強い。印象派 以降の近現代になって、タッチやストロークといった筆の使い方が注目されるようになった。描画法は「タッチ」と「 ストローク」のほかに、平行に等間隔で引いた斜め線で面を表わす「ハッチング」、細かく点を打つような「点描」、 輪郭をやわらかく表現する「ぼかし」などがある。 ※24グラッシ(gracis 仏)=※13グレーズ(glaze英) ※25スカンブル(scumble英) (色層の重ね塗り) 油彩画ではヴェラチューラ(velatura)とも言う。 glazeとは逆に下層が暗色で透明な塗りに、上 層が明色で不透明な薄塗りを擦り付けるように塗ることをいう。その結果、下層が仄かに、ヴェールを被ったように 、見えてくる効果がある。いわゆる光学的灰色(オプチィカル・グレー)が生じる。乳白光とも呼ばれる。 ※26キアロスクーロ(chiaroscuro 伊) 明部から暗部への調子の階調を利用して物体の3次元性を表す「明暗法」のこと。光と影の対比や変化や均衡がもたら す効果を駆使して、ある物体の立体感、或いは画面における遠近感を表現し、また、光源の設定や光と影の対比などの 照明の方法によって劇的な効果を演出するなど、極めて重要なこと技法である。この技法はレオナルド・ダ・ヴィンチ が徹底的に研究し、後のカラヴァッジョらに継承された。また、単色の明暗の調子で描かれた絵や素描も意味する。 ※27タベルナクル額 (Tabernacle Frame英) タベルナクルとはユダヤ教において、イスラエルの民と神の間に交わされた契約の板を収めた櫃(ひつ)を祀った移 動可能な聖所のこと。聖体にパンを納める聖櫃を祀る「幕屋」をも意味する語でもある。中世の建築用語としては聖 人像を置くための壁龕(へきがん)を指す。この様式では屋根部分が絵画を入れるどう部分よりも張り出している特徴 がある。建築物をミニチュア化したもので、当時裕福な家庭の小礼拝所において、祈祷用に描かれた聖画を、雑多な 周囲から聖別する重要な役割を担っていた。 ※28 樹脂(resin英) 樹木分泌物のことをいい、全て天然ワニスの原料となる。年代の古さにより、現存樹脂、半化石樹脂、化石樹脂と分 類できる。古くはエジプト時代に香油として使われた。19世紀になって化学実験により、合成樹脂研究は促進されて 、塗料及び、美術家用絵具会社のために重要な原材料の製造が行われている。 参考画像 Wikipedia Web garalley of art 参考文献 ノラの絵画の時間 絵具の部屋フロント 尾藤衡己 Wikipedia キュウコンステンドグラス 絵画技法体系 上 哲男 絵画の教科書 小沢 基弘・尾藤衡己 丹羽洋介 Bob Flexner “understanding Wood Finishing” ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 トンプソンのテンペラ画の技法 D.V.トンプソン.Jr.著 佐藤一郎監修 黄金背景テンペラ画の技法 紀伊 利臣著 絵画材料事典 R.J.ゲッテンス G.L.スタウト著 森田恒之訳 絵具の科学 ホルベイン工業 技術部編 世界大百科事典 新潮 世界美術辞典 新潮社版 http://fumieve2.exblog.jp/ artwords 藤田千彩 一般社団法人 日本アマニ協会 日賀野兼一 最後までご覧いただきありがとうございます。今まで自分の中ではやや漠然としていたものを、額縁の冊子に合わせて、まとめてみたものです。整理してみるとテンペラから油彩へとある時期から一気に変わって行ったのではなく、かなりの長い時間の中で、共に併用して使われていったのが少しでもご理解をいただけるのではないかと思います。今後、それぞれの時代におけるソルバントのレシピも繋げてゆけたらより良くなっているのではないかと思っています。 2018年 12月9日 Atelier LAPIS 筒井 祥之
by johanesvermeer02
| 2018-12-01 18:32
| 絵画
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