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ヨーロッパの額縁の歴史 No.1



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LAPISの展覧会に土曜日の生徒さんの今村さくらさんがGavin Claxton氏のサイトを翻訳した冊子を配布しました。
これからその内容を 少しづつ紹介してゆきます。


最初はイラストからです。





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絵が大好きなラピスちゃんと愛犬のクラウは、


ギャラリーにやってきました。


「ようこそ、ラピスちゃん」


と、画商のギャビンさん。


「こんにちは、ギャビンさん」







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「この絵いいなぁ。こっちもいいなぁ」


ラピスちゃんはお気に入りの絵を探すのが大好きです。


絵には、それぞれ額縁がついています。


「ギャビンさん、絵はどうして額縁に入っているの?」


ラピスちゃんは不思議に思いました。






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「それはね、ラピスちゃん、絵が生まれたときに額縁も


一緒にできたからなんだよ。ラピスちゃんとクラウが、


同じ年に生まれたみたいにね」


「へぇ、絵と額縁は一緒にできたの?」


ラピスちゃんは、驚きました。





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「そう、昔は、教会にある絵は額縁とくっついていたんだ。


でも、時代がすすむと、絵と額縁は別々に作られるようになった。


額縁をつくる専門の職人さんも生まれたんだ。


そうして、色々なデザインの額縁が作られるようになったんだよ。


じゃあ、これから、額縁の歴史を少しお話してみよう」








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J.M.Wターナー ヴェニスの『ため息の橋』

 額縁のない油彩画を見かけるのは、画家のイーゼルの上か、

美術館員の研究室の中くらいのものである。

画商として、私が額に入っていない絵を顧客に見せることは、

まずない。なぜなら、画家がそれを望んでいないと思うからである。

1833年に、J.M.Wターナーが、ヴェニスの『ため息の橋』の景色を

描いたとき、イーゼルの前で絵を描いているカナレットの姿も描いている。 

ヴェニスの景色を描いているカナレットが画面左下に見える。





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J.M.Wターナー ヴェニスの『ため息の橋』 左下部分


 近づいてみれば、カナレットの未完のキャンバスが、

なんと額に入れられてイーゼルに載っているのがわかるだろう!

 絵が仕上がる前のキャンバスに額をつける画家などいない。

 では、なぜターナーがそんなありえない光景を描いたのだろうか?

私は、ターナーが、額のついていない油彩画、特にカナレットの作品を額縁

なしでは鑑賞者に見せたくなかったのだろう、と思う。

1819世紀の油彩画の正しい見せ方において、額縁の重要性を絶対に過小評  

価すべきではない。事実、アンティークやヴィンテージの額縁は、それ自体

が芸術作品だからである。

私は、中の絵画作品のためだけでなく、それが入っている額のためにも、

絵を買うことがよくある。

額を修復すると、それに組み合わせるのにふさわしい、

額のない絵を待ったり、純粋に額を見ることを楽しんだりする。







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 私たちが、今日、知っている額縁の起源は、ルネサンス期のイタリアへ遡

る。初期の段階では額縁は絵画と一体化していたが、やがて絵を嵌め込む形

式の装飾された可動式のモールディング1が、宗教画を囲むのに使われ始め

た。15世紀後期から16世紀に、タベルナクル額※2が、建築装飾の一部とし

てデザインされた。(350年後に、ラファエル前派の絵の額として再び蘇った。)

額縁のデザインの発展は、ヨーロッパ家具のように、建築の発展の中でも特

にエンタブラチュア3と深く結びついていた。

徐々にシンプルになった額縁は、宗教とは関係ない人物の肖像画や、壮大な 

歴史画や静物画にも使われ始めた。それらはカセッタ※4額として知られた額

で、シンプルなモールディングや装飾が特徴である。しかし、16世紀後期、 さ  

らに手の込んだ額が広く用いられるようになってきた。


No.2へ続く


by johanesvermeer02 | 2018-11-12 10:25 | 額縁
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