ヨーロッパの額縁 No.1



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LAPISの展覧会に土曜日の生徒さんの今村さくらさんがGavin Claxton氏のサイトを翻訳した冊子を配布しました。
これからその内容を 少しづつ紹介してゆきます。






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J.M.Wターナー ヴェニスの『ため息の橋』

 額縁のない油彩画を見かけるのは、画家のイーゼルの上か、

美術館員の研究室の中くらいのものである。

画商として、私が額に入っていない絵を顧客に見せることは、

まずない。なぜなら、画家がそれを望んでいないと思うからである。

1833年に、J.M.Wターナーが、ヴェニスの『ため息の橋』の景色を

描いたとき、イーゼルの前で絵を描いているカナレットの姿も描いている。 

ヴェニスの景色を描いているカナレットが画面左下に見える。





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J.M.Wターナー ヴェニスの『ため息の橋』 左下部分


 近づいてみれば、カナレットの未完のキャンバスが、

なんと額に入れられてイーゼルに載っているのがわかるだろう!

 絵が仕上がる前のキャンバスに額をつける画家などいない。

 では、なぜターナーがそんなありえない光景を描いたのだろうか?

私は、ターナーが、額のついていない油彩画、特にカナレットの作品を額縁

なしでは鑑賞者に見せたくなかったのだろう、と思う。

1819世紀の油彩画の正しい見せ方において、額縁の重要性を絶対に過小評  

価すべきではない。事実、アンティークやヴィンテージの額縁は、それ自体

が芸術作品だからである。

私は、中の絵画作品のためだけでなく、それが入っている額のためにも、

絵を買うことがよくある。

額を修復すると、それに組み合わせるのにふさわしい、

額のない絵を待ったり、純粋に額を見ることを楽しんだりする。







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 私たちが、今日、知っている額縁の起源は、ルネサンス期のイタリアへ遡

る。初期の段階では額縁は絵画と一体化していたが、やがて絵を嵌め込む形

式の装飾された可動式のモールディング1が、宗教画を囲むのに使われ始め

た。15世紀後期から16世紀に、タベルナクル額※2が、建築装飾の一部とし

てデザインされた。(350年後に、ラファエル前派の絵の額として再び蘇った。)

額縁のデザインの発展は、ヨーロッパ家具のように、建築の発展の中でも特

にエンタブラチュア3と深く結びついていた。

徐々にシンプルになった額縁は、宗教とは関係ない人物の肖像画や、壮大な 

歴史画や静物画にも使われ始めた。それらはカセッタ※4額として知られた額

で、シンプルなモールディングや装飾が特徴である。しかし、16世紀後期、 さ  

らに手の込んだ額が広く用いられるようになってきた。


No.2へ続く


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# by johanesvermeer02 | 2018-11-12 10:25 | 額縁 | Comments(0)

ヨーロッパの額縁 No.2



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【イタリアのアリキュラー額】

 初期のアリキュラー額(耳の形に似ている額)は、フィレンツェの

メディチ家コレクションで用いられたものと、17世紀イタリアのマニエリスム5のサンソヴィーノ額6である。

サンソヴィーノ額は、重なり合い、絡み合う渦巻装飾や部分メッキ、グラッフィート7装飾がその特徴である。

一方、メディチ家やフィレンツェの額は、全体に金メッキされ、華やかな透かし彫りがされている。









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【サンダーランド額】


 イタリアのマニエリスムに影響を受けたイギリスの額縁で、

渦巻装飾は、マニエリスムより浅く柔らかな浮彫となった。

サンダーランド額は、耳状の彫りが特徴で、頂上にカルトゥーシュ8

下部にマスク(人面)がついているのが、その典型である。









【オランダ額】


17世紀、オランダと新しい世界との交易により、鼈甲(べっこう)や黒檀(こくたん)のような、外来の木材などの多くの珍しい素材が、北ヨーロッパにもたらされた。

この時代のオランダ額は、ボレクション様式9(盛り上がった凸状モールディングの額)といい、その表面に黒檀仕上げをし、銀箔や象嵌細工や鼈甲などで化粧貼り装飾を施すことで、その価値をさらに高めていた。

 オランダ額は基本的には2種類に分かれており、一つ目は、より簡素で禁欲的であり、全体的には黒檀貼り仕上げで階段状になった平面と波状モールディングが施されている。

もう一つは、より手の込んだオランダ・アリキュラー様式で、豪華絢爛に金メッキされ、花や果物の綱飾りや武器の模刻などで飾られていた。


  No.3へ続く


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# by johanesvermeer02 | 2018-11-11 21:24 | Comments(0)

ヨーロッパの額縁 No.3



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【カルロ・マラッタ額、または、サルバトール・ローザ額】

 イタリア・バロックの画家カルロ・マラッタ(1625-1713)の名にちなんで付けられた新古典様式の額で、その起源はサルバトール・ローザ額に由来する。

グランド・ツアー10によってイギリスに持ち帰られ18世紀のイギリスで人気を博した。基本的に、金箔を水貼りしており、中央が窪み(スコティア部11)、

盛り上がった凸状の上端(うわば)と端先(はさき)のある

オジー・モールディング12(葱花線繰型)でできている






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【パラディアン額、またはケント額】

 パラディアン額は、ジョージ王朝時代のイギリスで人気を博した。

その作例は、今日、1718世紀の多くの素晴らしい、イギリス油彩画に嵌められたもので見る事が出来る。これらのパラディアン額は、当時、第一級の建築家ウィリアム・ケントによってデザインされ、ケント額として広く知られるようになった。

 これはケントのあらゆる設計に見られるように、16世紀のアンドレア・パッラーディオのウィトルウィウスの建築や、その追随者である17世紀のイニゴー・ジョーンズから、直接影響を受けている。そして広いフリーズのある平らなアーキトレーヴ・プロフィールに、彫りや砂加工が施され、突出した四隅のある建築的モールディングが特徴である。







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【ルイ様式】

見事な彫りと金メッキされたフランス・バロックとロココの額縁は

5つの期間から成る。

① ルイ13世様式(1630-1643

② ルイ14世様式(1643-1715

③ 摂政様式   (1715-1723

④ ルイ15世様式(1723-1774

⑤ ルイ16世様式(1774-1792

≪ルイ13世様式≫

凸状プロフィールと半円のトルス13部分をもつバロック様式。

連続した葉のパターンが複雑に彫られ、金箔が水貼りされている。



  N0.4へ続く




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# by johanesvermeer02 | 2018-11-09 21:49 | 額縁 | Comments(0)

展覧会のお知らせ

10月8日(月)~14日(日)
銀座の月光荘画室Ⅱにて展覧会を行います。
日頃の研究の成果を致しますので、お近くにお越しの際には
是非、ご覧ください。
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# by johanesvermeer02 | 2018-09-23 15:28 | 教室 | Comments(0)

2つの木地の完成  ー土曜日コースー

以前LAPISで販売した2つの額縁制作キットです。
2つの木地ができましたのでご紹介します。


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こちらはタベルナクル型額縁です。SFさんのオリジナルデザインです。

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こちらはATさん制作のフライボワイアン型ゴシック額縁です。
複雑なキットを作ったので組み上がるかが心配でしたが、
無事に組み上がって私としても一安心です。
これから下地塗り、金箔貼りまで挑戦は続きます。






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# by johanesvermeer02 | 2018-06-23 22:12 | Comments(0)